黒部川源流岩魚釣り

源流岩魚タイトルロゴ

渓流魚と遊ぶ
源流岩魚(イワナ)と水中写真で遊ぶ
黒部川源流岩魚釣り
黒部川源流で岩魚釣りをしようと登山に初挑戦 : 1879/8/12

第一回目:有峰湖〜太郎山〜薬師沢〜黒部源流ルート

黒部川源流へのルート選び

黒部源流

黒部川の釣については、数多くの釣雑誌で紹介されています。
昔と比べて岩魚の姿が小ぶりになったとはいえそれでも黒部川は、渓流釣りを 愛する人にとっては「憧れの聖地」です。
死ぬまでに一度は訪れてみたい!そのように思う方は数多くおみえになるはずです。
私も黒部ダムへは釣りに行きますが源流部へは足を踏み入れていませんでした。
でも思いきって出掛けてみる事にしました。

なにぶんにも登山は初心者ゆえ、登山誌などを読み漁って情報を集めてみました。
黒部川の源流部へは、黒部ダムから平ノ小屋まで行き平ノ渡 を船で渡り赤牛岳を経て源流を目指すルートと、
新穂高温泉から三俣蓮華岳を経て源流部を目指すルートと、
有峰湖から太郎山を経て源流を目指す ルートが有ります。

いずれのルートも登山道を利用するため薬師沢あたりにたどり着きます。
その他、黒部川そのものを遡上する方法もありますが、 調べてゆくうちに、黒部川を遡上するルートは、黒部川そのものが軟弱な釣り師が相手に出来るような場所でない事が分かり断念しました。
何がそのようにさせたのかと言いますと、
●第一に行程が長すぎます。 黒部ダムから一日歩いても辿り着く事が出来ず、河原でのキャンプが必要。
●また整備された登山道もないので川は泳いで渡らなければならない事。
上の廊下といわれるところは狭窄した岩盤地帯ため雷がきたら雨が一気に黒部川に流れ込み、すぐに に増水するらしい。
●なにぶんにもこのルートでは、一週間ほどの休みが必要
との事で遡上ルートはとても山登り初心者には無理と分かり断念しました。

折立〜太郎平小屋〜薬師沢小屋

黒部源流

話が横道に反れました。
源流部へのルート ですが、いずれのルートを選択しても源流部へたどり着くには2〜3日の日程が必要です。
いくつかの行程の中で一番楽そうに思えた?有峰湖〜太郎山〜薬師沢のルート を選びました。
それでも源流部へたどり着くには1日半の時間を要します。
また、休日の関係で釣りが出来るのはほぼ1時間となります。

一日目:有峰湖・折立(10:00)〜太郎平小屋(16:00)・泊り
二日目:太郎平小屋(8:00)〜薬師沢小屋(12:00)・源流で釣1時間〜太郎平小屋(16:00)・泊り
三日目:太郎平小屋(8:00)〜有峰湖・折立(13:00)
なお、有峰湖を早朝に出発すれば薬師沢小屋に一日で着くことは可能だそうですが、 私のような初心者では体力的に無理です。
このため 余裕を持って太郎平小屋で行きと帰りに泊まる事にしました。

薬師岳

有峰湖の折立ヒュッテが太郎平小屋への登山口となります。
折立は標高が1400mほどのところですが、 最初にここから400Mほど、 蒸し暑い樹林帯(シラビソなどの樹木に覆われたところ)を登ります。
階段状の登山道は尾根筋へ出るまで続いていますので、100階建てのビルの階段を上るようなものだと思ってください。
しかも20k程の荷物を背負って。 山登りが初体験だった事と、体が慣れていないために登り始めは5分ほど登り10分ほどの休憩です。
ベテランは30分ほど登り5分ほどの休憩をとるらしいのですが、 ペース配分が上手くいきません。
結局400m登るのに2時間かかりました。
樹林帯を抜けると三角点へ出ます。
ここからは開けた尾根筋となります。
開けたとはいえ、緩い傾斜で、ここからは、水場がありませんのでさらに大変です。
水は、1リットル用意しましたが、そんなものは既に樹林帯で飲んでしまい水筒の中は空です。 夏の日差しが容赦なく照りつけて、頭はモウロウ、喉はカラカラ 、思い浮かべるのは水の事ばかりです。

登山で飲んだ忘れられないコカコーラの味

太郎平小屋

尾根筋からはるか彼方に沢が見えるのですが、とてもそこまで行く気力はありません。
それでも何とか、水の事を頭に 浮かべながら、太郎平小屋へたどり着きました。
この小屋で飲んだ2本のコーラの味を忘れられません。
今でもハッキリと思い出すことが出来ます。
山小屋のコーラは、下から荷揚げするために1本が500円でした。
でも山小屋ではコーラが500円しようと、喉が渇いた登山者にはとてもありがたい飲み物です。
あまりにも喉が渇いていたのか、二本のコーラを息継ぎもせず、むせ返る事も無く飲む事が出来ました。
喉にグビグビグビグビと音を立てて吸い込まれていきます。
水道の水をホースで喉に注ぎ込むようにして、スムースに喉の奥へ奥へと入っていきます。

初めて体験しました!山小屋は静寂な大人の世界

夕日

夕食前の山小屋は静かなものです。
耳に入るのは風の音、かすかに聞こえてくる沢筋の音ぐらいで、都会の喧騒とは打って変わった「大人の世界」 が満喫できます。
この山小屋へ来るためには自分の足で歩くしか手段がありません。
したがってそれなりの目的を持った人しかこの場所には来られません。
ほとんどの登山者は40歳代以上の大人ばかりです。
騒ぎ立てる事もなく、今日の一日の行程を振り返りながらつかの間のひとときを過ごします。
大半の登山者は広場に出て夕焼けを待ちます。
誰かが沈む夕日に向ってフルートを奏でていました。
真っ赤な夕日は日本海へとゆっくりと沈みます。
おもわず一斉に拍手が沸き起こりました。

太郎平小屋では夕食の他に風呂がいただけます。
風呂といっても湯に浸かるだけですが、それでも疲れた体にとてもありがたいサービスです。

太郎平小屋から黒部川源流・薬師沢小屋へ

薬師沢小屋

太郎平小屋を8:00に出発し薬師沢沿いの登山道を歩きます。
太郎小屋には時間の関係でもう一泊します。
大半の荷物は預けて釣り道具だけを持参 します。
昼食は山小屋に頼めばオニギリを作っていただけます。
釣にはウェーダーが欠かせませんが、このような山岳地帯では荷物になり体力を消耗する元となりますので、 釣具以外の装備は 雨具のみです。
源流部は川幅もさほど広くないためにルアーの他にテンカラを用意しました。
目指します薬師沢小屋までは太郎平小屋からほぼ3Kの距離となります。
登山道は熊笹に覆われていますが整備されていて歩きやすい道です。 薬師沢小屋へは12:00頃に到着しました。

薬師沢小屋付近の淵

小屋は薬師沢と源流との出合いにあります。
小屋の前には釣橋があり、ここからの眺めからは黒部川の源流の景色を堪能 できます。

黒部川の岩魚

黒部の岩魚

30年程前に読んだ釣雑誌には、黒部川源流の尺岩魚として数多くの記録が紹介されていました。
ここも釣り人が年々増えて岩魚も 数少なくなったそうです。
特に薬師沢小屋あたりは登山初心者でも入渓が比較的簡単なことから、 多くの釣り人が訪れるようになりその数は激減しているそうです。
薬師沢小屋ではそのような 現状を訴えてリリースを奨励していました。
私もそう思います。
この黒部川源流で釣った魚を持って帰ることは相当の体力をお持ちでないと出来ないと 思います。
それと、あなただけの場所ではありません。

黒部の岩魚

ここは渓流を愛する方々の聖地として、次の世代に確実に残す事が出来るように、 釣り以外の楽しみも期待して訪れることが大切です。
岩魚は小ぶりのものばかりですが、ルアーでもテンカラでもよく釣れます。
本当にあなたは岩魚?と思ってしまいます。
どうもダム湖の流れ込みなどのスレた岩魚と様子が違います。
ルアーにもテンカラにも何度も飛びついてくるのです。3匹釣って釣りを止めました。

薬師沢小屋 ※二日目:薬師沢小屋〜太郎平小屋

時間の関係上釣りは10分で止めました。
というより昼飯を食べて「昼寝」をしていました。
贅沢な話ですが、釣りはあまり釣れても面白くない。
釣れないからいろいろ工夫をするのですが・・。 充分な体力も残っていなかった事と、 川を移動するには泳がないと無理との結論での「昼寝」です。
13:30頃薬師沢小屋を出発し太郎平小屋へ向いました。
今日はほとんど空荷状態のため多少の登り坂もなんなく乗り越えられます。
途中で、30Kはあろうかと思われる荷物を担いだ女性とすれ違いました。
聞けば高天原まで行くとの事です。
高天原へもやはり薬師沢 小屋から雲ノ平まで約400Mを直登します。
ちょっとフラフラしてはいましたが、それでもすごい体力です。
しかも単独行です。
太郎平小屋と薬師沢小屋間の登山道は沢筋の樹林帯を通り抜けています。
このため、ただ何も考えずに黙々と歩きます。
どうも、樹林帯は疲れます。
景色などの気を紛らすものが無いためにひたすらにとか、黙々にとか、そんな言葉が似合う場所のため、 下ばかり見ていて首が疲れます。
開けた尾根あたりであればこのような事も無いのですが。
太郎平小屋へは16:00頃の到着です。
昨日と同様風呂をいただきました。
部屋は前日は相部屋でしたが、この日は個室です。

源流釣りの話なのに山登りを主体とした内容になってしまいました。
ほとんど登山道を歩いてばかりで、日程上釣り時間はわずか一時間。
しかも岩魚の出がよかったため10分足らずで止めてしまい昼寝です。 でも、こういう時間はスピードの速い都会では味わえません。
山ならではの楽しみ方です。

第二回目:立山・室堂〜五色ケ原〜刈安峠〜ヌクイ谷〜黒部源流ルート

立山登山の帰り道、ヌクイ谷へ立ち寄る : 1980/8/12

ヌクイ谷・黒部ダム湖

黒部ダム

ヌクイ谷へはダムの湖畔の登山道を4時間ほど歩きます。
その他に、立山・室堂から五色ケ原〜刈安峠〜ヌクイ谷を目指す方法もあります。
今回は子供と五色ケ原に出かけてその帰り道にヌクイ谷へ立ち寄りました。
五色ケ原を8時に出発し、ヌクイ谷へは10時頃到着しました。
今日は平の小屋での宿泊です。

ヌクイ谷の岩魚

早々に宿泊の手続きを済ませ、ヌクイ谷へ出かけました。
途中ヌクイ谷の流れ込みで、小屋の従業員が釣りをしているのを見かけ情報収集 のため近寄りました。
泊まり客への岩魚を釣っているそうですが、ビクの中には25cm程の型の良い岩魚がウヨウヨしていました。
何気なく釣りの仕掛けを見るとなんだか変です。
鯉用の竿に1.5号の糸をつけて浮き釣りをしているのです。
岩魚の浮き釣りはあまり見かけません。

ヌクイ谷の岩魚

そういえばこれと全く同じ仕掛けを岐阜県内のダム湖で見た事がありました。
山梨から来た釣り人だったのですが、浮き釣りでオキアミをコマセにして 小さな虹鱒とヤマメをおびき寄せて10cm程の小魚をおそらく100匹以上はいたのだと思いますがビクに溢れる程釣り上げていました。
釣り上 げた小魚はその後どこでどのように連絡したのか、同じく山梨ナンバーの鮮魚店の冷凍車が回収していきました。
山小屋の従業員も全く同じ方法での釣りです。
足元にはコマセに使ったオキアミの袋が転がっています。
確かオキアミのコマセ釣りは河川では 禁止されていたと思います。

ヌクイ谷の岩魚

まあいろいろあるわなと思いつつ情報収集をしました。
今の時期(八月)は岩魚はまだ遡上しておらず、谷には 小ぶりの岩魚しかいないとの事です。
雨が降り川が増水すれば岩魚は遡上を開始するそうです。
その時期を待って多分流れ込みで待機している はずとの事でした。
結局流れ込みではルアーを散々投げましたが釣れませんでした。
かなりの深場にいるそうで、浮き釣りの浮き下はおよそ3m 程でした。
流れ込みは立ち木と流木が多く相当数のルアーを無くし、流れ込みでの釣りをあきらめました。
ヌクイ谷でテンカラを使っての釣りに する事にしました。

ヌクイ谷の岩魚

谷は川幅が5m程の小さな川です。
ダム湖の周囲自体が谷になっているためヌクイ谷も段差のある階段上の谷です。
ゴロ石が積み重なり 小さな淵が連続しています。
淵と淵との間は1m程の段差が滝状になっていて、このような状態がズーと奥の峠あたりまで続いています。
何気なく淵と淵との間の滝を眺めていると、何かがスーと苦も無く滝を上っていきます。
岩魚です。
岩魚が1mほどの滝をいとも簡単に 上っていくのです。

ヌクイ谷の岩魚

釣れた岩魚はすべて15cm前後の小さなものです。
黒部ダム湖へは幾度となく訪れていますが、いずれの谷でも釣れるのは15cm前後の岩魚です。
また、よく谷で見かけるのは 5cmほどの一歳魚と15cmほどの二歳未満の岩魚ばかりで、25cmクラスはなかなかお目にかかれません。
25cm以上の岩魚は釣られてしまったのか 定かではないのですが(平ノ小屋の主人が釣りきったと豪語)、特に夏場は15cm未満の岩魚が目立ちます。
二歳未満ですと産卵には参加できないため、いずれはダムに下り産卵のため再び遡上するのだと思います。
ヌクイ谷 を含めた本流以外の河川はいずれも川幅が狭く、流域も最上部まで4kと短いため とても多くの岩魚が生息できるような環境ではないようです。
ここに住む岩魚が長い間に習得した生活の知恵かもしれません。勝手な推測ですが・・・。

第三回目:黒部ダム〜ダム湖をカヌーで縦断〜針の木沢〜黒部源流ルート

黒部川本流で釣りをしようとダム湖を渡るも、山小屋の親父に叱られあえなく撤退。 : 1881/8/11

黒部ダム湖・針の木谷

平の小屋から見た針の木谷流れ込み

黒部ダムへ注ぐ川は本流を含めて6本あります。
本流が最大の流れとなりますが、この川の流れ込みに到達するのには、黒部ダム湖から 平の小屋まで約4時間湖畔の登山道を歩きます。
そして、平の小屋からは1日2回運転される平の渡し(船)に乗って針の木谷へ渡ります。
さらに針の木谷から赤牛岳を目指して読売新道を約1時間登ります。
流れ込みには奥黒部ヒュッテがあり釣り客はここを定宿としています。
歩きたくないという方は、平の小屋への宿泊を条件に小屋の親父と交渉すれば、 機嫌がよければダムまで迎えに来てくれて、また流れ込み まで送ってくれます。
それでも本流流れ込みの釣りを堪能するのには最低3日の休暇が必要です。
またダム湖の標高は1000メートルを超えるためシーズンは 6〜9月の短期間に限られます。

平の小屋から見た針の木沢流れ込み

随分と前の話ですが、ある週刊誌に「黒部ダムの釣り」という記事があり、 その中で本流で釣れた50cmの虹鱒を紹介していました。
そうかココへ行けば大物に出会えるのかと、長い間夢の中で50cmの虹鱒が躍って随分とウナされていました。
このままでは体に悪いと黒部ダム本流まで行こうと急遽思い立ち、あれこれ計画を練りました。
ダム〜平の小屋〜針の木谷〜黒部川本流流れ込み
扇沢〜針の木峠〜針の木谷〜黒部川本流流れ込み
いずれも最低6時間以上の行程になります。往復を考えるとやはり日程は3日必要です。
休暇がそんなに取れないためどう考えても本流へは辿りつけません。
本流までは時間がかかることから、 カヌーを利用して本流を目指す事にしました。
カヌーは組み立て式を用意しました。
重量が18キロほどのカヌーを二つに分解して二人で運びました。
背中には既にリュックを背負っているため 手で抱え込むことになります。
これは結構な重労働でロッジくろよん迄の1時間が苦痛でした。
とりあえずカヌーを組み立てて針の木沢を目指します。
今日はここで野営します。

針の木沢の虹鱒

針の木谷へはカヌーを乗り入れてから1時間程で到着しました。
計画では、今日はここで野営をして、明朝に流れ込みを目指す予定です。

さっそくの釣りです。
針の木谷の流れ込みも他の黒部ダムに注ぐ川同様に土砂が堆積してロケーションとしては良くはありません。
狭い流れ込みでルアーを投げると虹鱒がヒットしました。 二人で交互に3回ほどルアーを投げて虹鱒が2匹。
その後アタリがないためさっそくの釣りはここで止めて野営の準備です。
テントを張り、流木を集めて焚き火の準備です。日も傾きかけて夕食の支度です。
鍋をバーナーにかけて湯が沸くのを暫く待ちます。
バーナーの青い炎を見つめていると、ゴーという音が聞こえてきました。
音はだんだん 大きくなってこちらに近づいてきます。
しまった見つかったか。実は、国立公園内では決められた場所以外のキャンプ、焚き火、動植物の捕獲 等は禁じられています。
針の木谷は平の小屋の真向かいにあり、この山小屋の親父に見つかる事を恐れていました。
なぜならこの山小屋 親父は自然公園観察員を勤めていて、以前この小屋に泊まったときに身勝手なキャンプは俺が取り締まると力説していたのを覚えていたのです。
テントとカヌーは山小屋からは見えない位置に設営し隠したのでしたが、 先程登山者を針の木谷から平の小屋まで渡し舟で運んだようで、その 時に見つかったようです。
山小屋の親父は、ボートで乗りつけるとすかさず準備した焚き木を足で崩し、 いきなり我々の襟首を掴んでの説教です。
「おまえらここでキャンプを してはいけないのは分かっているだろう!」
「ガミガミガミガミガミ・・・・・・!」
私どもは確信犯ですのでここは「ハイ」と答えるしかありません。
さんざん山小屋の親父に絞られた挙げ句、本流での釣りはあきらめて撤収する事にしました。
暗い湖面にカヌーを乗り入れてダムを目指します。穏やかな湖面では月がゆれて、コウモリが キーキーと鳴きながら水面スレスレに飛び回ります。
「そういえば、本流で鉄砲水に合い随分と人が流されたみたいだけど、何人もこのダム湖に 埋まっているんだろうな」と独り言のようにつぶやくと、相棒は「・・・・・・」無言のまま必死にカヌーのパドルを漕ぎ始めました。
帰りは行きより早く着きました。 
※虹鱒は撮影後リリースしました