渓流魚と遊ぶ
サクラマスと岩魚が産卵を始める?
サクラマスを探しに川へ・・サクラマスと岩魚が産卵を始めそうだし・・ : 2006/9/24

居場所を探すサクラマス

巨大な潜水艦のようですが、サクラマス(メス)です。

禁漁期間中の釣り人達
岐阜県内の河川の大半は9月に入ると禁漁期間となります。
今日はサクラマスの姿を撮影しようと、ある河川に入り込みました。
しかし、川は何時もどうりの賑わいです。
「アレ?確か禁漁期間中だけど??」 おかしい、確か禁漁期間のはずだと、入漁券を確認しました(釣りはしませんが入漁券は購入しています)。 時計の日付と確認しましたが、間違いなく禁漁期間中です。

禁漁期間中に釣り糸を垂れる釣り人

「尾張小牧」「名古屋」ナンバーの車が道路に止めてあり、 川の中を覗くと釣り人が釣り糸を垂れています。
川は秋に入って水量も細るため、普段滅多に入る事の出来ない廊下状の谷などへも、 車の位置から考えると入り込んでいる様子です。
きのこ採りの車両もあるため、確認のため車の中を伺うと釣り道具が置いてあり、 釣りである事は間違いが無さそうです。

鮭族の産卵は虹鱒(自然繁殖では4〜6月に産卵)を除き、 9〜1月に産卵をします。禁漁期間は産卵の期間となります。
生き物が生き物たる最大の目的としては種を繋ぐ事ですが、 この期間の魚を釣り上げてしまってはそれもかないません。
生命の連鎖を断ち切る事になり、釣り人としても9〜1月の鮭族の産卵期間中は釣りをしない事が、 釣り人の未来に向けての最低限のマナーと思います。
今回サクラマスがいた河川でも、真新しい踏み跡や煙草の吸殻があり、 つい最近釣り人が入った様子です。

まったく魚がみつからなかった?

全く魚がいません

ところで、今回の川はどうもいつもと様子が違いました。 下流から瀬、淵と魚がいそうなところを全て覗いたのですが魚が見当たらないのです。

いつもはヤマメや岩魚が泳いでいる淵にも瀬にも全く魚がいないのです。 ヤマメや岩魚に混じって群れをなしているウグイも全く見たりません。
今年はこの地域を襲った台風も少なく、川の水量も普段より少なめです。 しかし淵などは、深さ4〜5メートルほどあり、水量のせいでもなさそうです。 いつもはウグイが群れているのですがここにも魚が見当たりません。 毒流し?にあったとかと思われるほどです。
普段この川は水量によっては高巻く必要がありますが、 出水が少なかったため多くの釣り人が入り込んだのでしょうか?。 それとも出水の少ないのを見越してさらに下流に下ったのか、よく分かりません。

二匹の魚が寄り添い、産卵の準備をしていた
一匹は岩魚と確認、もう一匹は?

写真では分かりませんが大きな魚が二匹いました

散々探し回った挙句、ついにサクラマスがいるであろうと思われるポイントに到着してしまいました。
下流からおよそ1キロほど遡りましたが、見かけた魚は10cmほどのヤマメ二匹とウグイ一匹。 このポイントにサクラマスがいなければ場所を変える必要があります。
浅瀬からユックリと潜り込み岩陰から覗いてみます。 黒い影が確認できました。 二匹の魚が寄り添っています。
一匹はこちらに近づいてきたため確認出来ました。岩魚です。大きさは30cmほどでしょうか。 もう一匹の大きな魚は黒い影が確認できるだけでよく分かりません。 「岩魚?」互いに寄り添っていた魚の一方が岩魚であったため瞬間にそのように思いました。

魚がまったく見つからなかった深い淵

後ろからもう少し近づいてみる事にします。 川の中を音を立てないように匍匐前進?します。 大きな魚は盛んに尾びれで川底を煽っています。 これで雌の魚である事は分かりました。
さっそく、カメラのピントを合わせます。しかし暗くてピントがなかなか合せられません。 そうこうしている内にどうやらこちらの存在に気付かれてしまったようです。 カメラの先に魚が見当たらなくなってしまったのです。
「上流か?」と思いヘビのように体をくねらせて落ち込みを潜り抜けます。 強い水圧に流されそうになりながら落ち込みを潜り抜け、上流の淵のヘリに辿り着きました。 立ち上がると水面に影が走るため、そのまま水面の中に頭を突っ込んで周囲を見渡しました。

オスは岩魚、もう一匹はサクラマス?

サクラマスが戻ってきました

いました。落ち着かない様子でしたが盛んに岩の間を行ったり来たりしています。 どうやら安全な場所を探しているようです。
ここで逃げられたら、この先は深さ10メートル程の深い淵です。とうてい探す事は不可能です。 私も岩に体を挟んでしばらく様子を見る事にしました。10分程水の中に体を沈めていたのでしょうか。
初秋の水は冷たくて水温は8度。今日は冬用のウェットスーツを着込んでいますが、 それでも手や顔は冷たく痺れてきます。 もう限界かなと思った頃、魚も安心したのか岩の間に身を寄せてユッタリと泳ぐようになりました。
魚は確認したところ「サクラマス」です。体全体が黒っぽいのですが背中に黒い斑点が 散らばっているのが確認できました。 腹部の赤い斑紋は鮮明ではないようですがサツキマスに見られる赤い朱点はないため サクラマスであろうと思います。
最近は同一河川にアマゴとヤマメが混成しているため判断が難しいのですが、 私の数少ない経験からサクラマスと断定しました。

二匹の魚が寄り添い、産卵の準備をしていた

サクラマスは何かを訴えるようにおとなしくしていました

岩魚とサクラマスのペア

しかし、この川の現状は悲惨でした。 何故ならば、成熟魚はこの写真のサクラマスと30cmほどの岩魚のみ。 あとは10cmほどのヤマメが二匹。
しかもサクラマスは産卵の時期を迎えています。 岩魚も何とか種を残そうとサクラマスに寄り添っています。 サクラマスのメスと岩魚のオスとのペアで産卵が始まりそうなのです。
問題は産卵後どうなるかという事ですが、森田健太郎氏の 岩魚変愛党 特殊斑紋 を参考にしますと、岩魚とヤマメの交配種の水中写真があり、ヤマナ(岩魚とヤマメの雑種)が生まれるようです。
一代雑種(F1)のため次の子孫を残す事は難しいそうですが、 上高地の岩魚とブルックトラウトの交配種の例もあり、一概には言えないのかもしれません。

サクラマス

魚達の複雑な関係

アマゴとヤマメの交配種は種が近い事も有り、 側線付近に朱点が散らばる「ヤマゴ」(勝手に命名)が数多く見られる河川もあり, 交配が進んだ状況下で繁殖しています。
純粋ヤマメと純粋アマゴ=ヤマゴ(雑種)の出現は、 さらにヤマゴと純粋ヤマメの掛け合わせ、 ヤマゴと純粋アマゴとの掛け合わせもあり、 安易な放流事業が魚たちを混乱させています。

上高地の魚達というか、長野漁協はさらに複雑怪奇、交雑種の宝庫

ちなみに魚たちの複雑な関係を示す典型的な例として上高地とその下流である梓川が挙げられます。
上高地は国立公園で環境省の管轄下に置かれており、 昭和48年以降公園内は禁漁となっています。 当初禁漁期間は3年間といわれていましたが、そのまま継続し現在にいたっています。
禁漁期間3年という設定は、すでに外来魚であるブラウンやブルックトラウトが 上高地には放流されており、近似種である岩魚との交配が危惧されたからです。
図式で示すと次のようになります
禁漁=魚が増える
→岩魚やブルックが増加して交配の可能性が高くなる
→雑種が出現
→純粋種と雑種が入り乱れて魚が増加
→餌の問題があり「縄張り」争いが起こる
→基本的に交配雑種は種として強いため在来種を席巻する(一代雑種)
→在来種が減少
→交配種は生殖能力に欠ける(二代雑種・一代雑種の1/2)ため魚が除々に減少
→魚の居ない川となる。

岩魚の乱獲と安易な放流がそもそもの原因

サクラマス

それでこれを更に調べてみたところ、1920年に長野県が明神池に設置した養魚場の 安易な外来魚育成が原因だったようです。
さらには養魚場の設立自体、この上高地地内に漁業権を持っていた 上条嘉門次が岩魚を乱獲したためだったようで、これがそもそもの問題の始まりのようです。
養魚場ではヒメマス、ブルックトラウト,ブラウントラウトの卵を北米から移入し梓川に放流していたそうです。 残念なことに当時の技術では岩魚の養殖は不可能であったそうです。
しかも最悪な事に、ブルックトラウトと岩魚を掛け合わせて出来た 一代雑種にさらに岩魚を掛け合わせて、 その中で岩魚に近い斑紋を持つものを岩魚(ブルックトラウトと岩魚の雑種)として出荷していたそうです。
このように上高地に居る魚は、岩魚なのか、ブルックトラウトなのか、 混合種なのか何が何だかよく分からないようになったようです。
上高地内の木道から見る大きな魚は、よく見ればブラウンのような、ブルックのような、 岩魚のようなわけの分からない斑紋の魚が多いのです。 もうこうなると、手がつけられず、全ての諸悪の根源は釣り師や日本人の食性の問題などと思えてきます。
飽くなき釣り師の欲求や日本人の食性が岩魚というニーズを生み、 少ない技術でそれを満たそうとしたところに無理があり魚たちを大混乱に陥らせたのです。
それでも、魚が釣れればイイやと思われる方はどうでもよい事なのかもしれませんが、 天然岩魚にこだわる多くの釣り師にとっては、 釣りをされる河川にヤマトイワナ、ニッコウイワナが供に放流され、 近い将来に上高地と同様の問題が危惧されるのではないでしょうか。
釣り過ぎてもいけないし、かといって在来種を無視した放流もいけないし、 一体このような種に関わる問題を誰が解決するのでしょうか?
実体が明らかになっていないため、そのような事などと安易に考えているかもしれませんが、 川の中の現状は酷い状況です。

せめて、禁漁期間中は釣りを止めれば、
また三年間禁漁期間を設ければ川は回復する

せめても、禁漁期間中は釣りを止めてもらえば。 また、20cm以下の岩魚(一回も産卵をしていない)は持ち帰らない。 三年間は河川に禁漁期間を設ける(三年で親魚が育つ)など出来る手立てはいくらでもあります。 魚が増えれば放流をしなくても、魚たち自身で命を繋ぐことが出来るのです。
サクラマスは私の前に暫く留まり綺麗な写真を撮影する事が出来ました。
それこそ「何とかしてよ」と訴えかけるように・・